123号

幽霊もさぞひだるかろ

木曜日、野並の駅まで歩いている途中で、突然はげしい空腹感に襲われる。
それはもう、めまいがするような。
慌ててコンビニで食料を買う。
おにぎりとパンとベビースター丸。
人通りの多い駅前の道路で、しゃがみこんで食べるわけにもいかないので、
買った物を抱えて駅に駆けこむ。
ホームのベンチで食べようと思ったが、しかし、ホームのベンチが遠い。
十数メートルが遠い。
もうだめだ死ぬ、と大げさでなく感じた。
手に提げたコンビニの袋から、ベビースター丸を取り出し、開けた。
歩き食いをした。
近くにいたおじいさんに「行儀が悪いな」と言われたが、その通りすぎて申し訳ない。
少し食べると、空腹感は消えた。

ベンチに座って電車を待ちながら、これはひだる神に憑かれたな、と思った。
餓死者などの霊が憑いて、突然の空腹感で人を苦しめる。
水木しげる先生の『昭和史』にも出てくる。
子供の頃の水木先生が、米子に油絵の展覧会を観に行った帰り、
突如の空腹にみまわれるが、近くに干してあった稲の穂を食べて助かる。
まるであんな感じで、おそろしい。
ちなみに、ひだる神の話は、愛知県にも残っていて、これもおそろしい。
ここでは、倦怠仏と書いて「だりぼとけ」と呼ばれる。

ところで、家に帰って今日の出来事を母に報告したら、馬鹿な話をしてないで、
続くようなら一度病院で検査してらっしゃい、と言われた。
母はいつも哀しいくらい正しい。
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