123号

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

漫画ナツ その3

 こちらの記事の続き。
 リストアップされているマンガの内容については、予告なくネタばれする可能性があります。
 今回から各論で、まずは、上にリンクした記事のうち、2.のマンガについて。

 せっかくナツなんだから、同じ作家の作品をうわーっと一度にいっぱい読むのもアリだ!
 実は、当初、1人につき1作という縛りを入れようかな、とも考えたのですが、やはり本当に好きなものならば同じ作家の作品でもドンドンあげるべきだろうと思い直し。
 …1人1作だと、100出せない、という現実的な理由もあります。

 選んだのは、坂田靖子、永野のりこ、杉浦日向子のお三方。
 順不同、敬称略でございます。

 まずは坂田靖子先生。
 代表作の『バジル氏の優雅な生活』や『D班レポート』は、あえて抜いてみました。
 それでも、同じく代表作と言われる『マーガレットとご主人の底抜け珍道中』をあげたのは、ひとえに、漫画ナツの募集記事に引用されていた、島本和彦先生のお言葉のため。
 すなわち、引用文の一部のみ引けば、

「今更いく所が無い、では漫画を読め」

 じゃあ、読むだけで旅行気分の味わえるマンガを選ぼう、と。
 『マーガレットとご主人の底抜け珍道中』は、マーガレット奥さんとご主人のタルカムさんのオブライエン夫妻が、世界中を旅する話です。
 第一話の行き先は南極。
 マーガレット奥さんは、あそこは空気がうすくてお湯が沸かないでしょう、と圧力ナベを持って飛行機に乗ってしまうところが何ともとぼけていていいなあ、と思います。
 坂田先生のマンガなので、そのまま実際の旅行の際のガイドブック代わりになるようなマンガではありません。
 行き先が日本の回では、マーガレット奥さんの読んでいた本曰く、
「ニッポンジンは清潔好きで一日中オフロに入っているの でも紙と木でできたマッチ箱のよーな家に住んでいて火をつかうと燃えやすくてキケンだからお魚をナマで食べるんですって」
という記述そのままの、スシ、テンプーラ、ゲイシャ、フジヤマの前をジンリキシャの前で走る、なぜか「○○アル」と喋る辮髪男性がいたりする日本が登場します。
 もちろん、外国だけでなく、イギリス国内(坂田先生のマンガは、イギリスを舞台にしたものが多く、オブライエン夫妻もイギリス人なのです)や、近所を周ることもありますし、場合によっては、タイムトラベルもします。
 いずれにせよ、リアルさは全くないのですが、かえって不思議な旅情というのでしょうか、何となく遠くへ行ったような気分を味わわせてくれるマンガです。

マーガレットとご主人の底抜け珍道中 (旅情篇) (ハヤカワ文庫 JA (581))マーガレットとご主人の底抜け珍道中 (旅情篇) (ハヤカワ文庫 JA (581))
(1997/06)
坂田 靖子

商品詳細を見る


 先ほども( )内で触れましたが、坂田先生のマンガには、イギリスを舞台にしたものが多く、次に、『叔父様は死の迷惑』も、イギリスを舞台にした作品です。
 小説家志望の女の子、メリィアンと、彼女の母親の弟であるデビッドおじさんが、主にメリィアンの住む村の小さな事件に巻きこまれたり首を突っこんだりして、解決したりしなかったり。
 デビッドおじさんは、作中での扱いを見るに、おそらく変わり者のダメ人間なのですが、漫画的には無敵の人物です。
 メリィアンの、こちらは父親の弟であるカタブツのグラハムおじさんや、好奇心が強くて分析力にすぐれた賢い少女のメリィアンも、彼には振り回されっぱなしです。
 自分にもこんなおじさんがいたら楽しいだろうなあ、という気持ちと、こんなおじさんが身内にいたらたまらん、という気持ちの両方を。
 最終回でグリーンランドを訪ねたメリィアンが、雪ダルマの顔の雪をはらわれて、「じっ…」と見るときの顔がかわいいよ。

叔父様は死の迷惑 (ハヤカワ文庫 JA (574))叔父様は死の迷惑 (ハヤカワ文庫 JA (574))
(1997/01)
坂田 靖子

商品詳細を見る


 また、坂田先生のマンガには、イギリスを舞台にしたものの他に、アジアを舞台にした作品も多くあります。
 今回あげた中では、『アジア変幻記』、『珍見異聞』、『伊平次とわらわ』の3作。
 後二者は日本のみですが、『アジア変幻記』の舞台は、西アジアなど手薄な地域もあるものの、アジア全域にわたっています。
 2冊目の「塔にふる雪」は「象牙飾りの窓」。
 おそらくインドの話。
 後で触れる『パエトーン』にも用いられる、魔力をもち人に憑く孔雀のモチーフが登場します。
 あらすじは以下のとおり。

 ある大金持ちの家の娘が、突然、象牙の窓飾りがほしいと父親に言い出した。
 早速、窓飾りを作るために細工師が呼ばれたが、細工師は、この仕事に気がすすまない。
 娘の部屋の大きな窓を飾るためには、軍隊で使うほどの数のゾウを殺して牙をとらなければならないのだ。
 しかし、いつまでも仕事をしないわけにも行かず、細工師は、お屋敷に出向いて、娘に窓飾りの好みの具合を聞くことにした。
 美しい娘は、細工師が、象牙の代わりに大理石や白檀の木の窓飾りをすすめても、やはり象牙。
 不審に思う細工師は、彼女の側に、美しいけれど何だかヘンな孔雀がいるのを見つける。

 坂田先生の描く化け物の類は、基本的にこわくないのですが、この孔雀はなかなかにおそろしいです。
 また、同じく「塔のふる雪」に入っている「桃の村」という話は、私の非常に好きな話なのですが、この話は日本を舞台にしています(ただし戦前)。
 特に、主人公の中塚が、友達と古本屋に向かう途中、見つけた坂道を、葛飾北斎の絵の、「くだんうしがふち」に似ていると言い、更に、
「風景が絵に似てきたようだ」
「このまま世界が小さな箱庭のようになったらおもしろいなあ…」
と呟く場面が特に。

坂田靖子セレクション (第4巻) 塔にふる雪

 『珍見異聞』は、たとえば『今昔物語集』のような説話集をそのままマンガにしたような作品です。
 何にも書いていないけれど、何か元になったテキストがあるんだろうか、などと考えてしまいます。
 私は特に「芋の葉に聴いた咄」の味噌田楽が好きな医者と、その小者である子供の話「味噌ひとなめ」が好き。
 化け物も出る話なのですが、2人の緊張感のなさがたまりません。
 他には、同じく「芋の葉に聴いた咄」の「葛の葉」。
 安倍清明の母親が狐だったという、いわゆる葛の葉伝説に関する話。
 母親が狐だったというウワサに、ノイローゼ気味の清明がそれを克服するまでの話。
 清明本人に神秘的な雰囲気が全くないのが(最後ちょっとありますが)、いかにも坂田先生だなあ、という感じ。
 清明に子供を助けてもらった母狐が、自分が清明の母親になってやろうか、と申し出る場面がとても良い。
 お前に母親になってもらって何になる、と言う清明に、清明の母親が狐だというウワサが嘘じゃなくなり、ウワサに腹を立てることもなくなる、というのが。
 元のセリフから、だいぶ省略して書いています。
 と、とにかく読んでみてください。

珍見異聞―芋の葉に聴いた咄 (希望コミックス)

 『伊平次とわらわ』は、平安時代の日本で、墓守の伊平次が主人公の話。
 特殊能力(伊平次は化け物などを見ることができ、また、祖父譲りの守りの小束で祓うこともできる)を持った主人公が、人外(わらわは、中納言の姫と自称する犬。野良犬の体に姫君の霊が憑いてしまった…んだろうか本当に)をお供に、毎回1つの事件を解決。
 事件は必ず死人の霊や化け物に関する事件です。
 こうしてあらすじを書くと、まるで少年マンガのよう。

080812_1738~0002[1]

 左が伊平次で右がわらわ。
 セリフまで入れたかったので大きな画像。
 読み進めていくと、段々とわらわがかわいく見えてくるのが不思議です。

坂田靖子セレクション (第8巻) 伊平次とわらわ 2 潮漫画文庫坂田靖子セレクション (第8巻) 伊平次とわらわ 2 潮漫画文庫
(2001/02)
坂田 靖子

商品詳細を見る


 『時間を我等に』はSF。
 「時間を我等に」、「怪談」、「やわらかい機械」の3部構成になっています。
 特に、「やわらかい機械」が好きです。
 あとがきで
「人間がつくりだした唯一の生物”機械”についての物語」
と書かれていましたが、最初の「シリンダーの森」が、まさにそんな物語。
 1人暮らしの中年男性が、森に住む不思議な老人からシリンダーをもらいうけ、一緒に暮らし始めるが、シリンダーは男性の家でどんどん元気を失っていき…という話。
 ちなみに、この話のシリンダーは、このシリンダー
 これが、人間の女性のように扱われています。
 機械→人。
 対して、最後の「賢者の石」には、事故で身体の一部が「人工ナントカ」となり、
「たとえば―身体中の構成物が非生物と全部とりかわったら その人間は死んでるんだろうか―?」
と友人に尋ねる男性が出てきます。
 人→機械。
 諸星先生の「生物都市」もそうですが、機械と人間が融合する話って、ただそれだけでドキドキします。

時間を我等に (ハヤカワ文庫 JA (506))

 『パエトーン』については、先日も書きました。
 併録の「孔雀の庭」が好きです。
 ロンドンの美術商、マクグランが狂言まわしのマクグラン画廊シリーズの中の1作。
 美術商、画廊ということで、美術品が頻出するシリーズです。
 「孔雀の庭」では、リューベンスやセガンティーニの絵、ガレのガラス。
 ミントンのボーン・チャイナ…は美術品あつかいでいいのかな?
 特に印象的だったのは、セガンティーニの絵。
 「孔雀の庭」でマクグランは、没落した侯爵家の主人から美術品の買取を依頼され、その屋敷へおもむきます。
 侯爵家の主人はまだ若い男で、庭には孔雀の放し飼いにされているような広大な屋敷で、大勢の召使にかしずかれながら暮らしています。
 屋敷に泊まったマクグランは、その夜、主人に誘われて外に出るのですが、そのとき、庭の木を見て、あの絵にそっくりだ、と思い出すのが、セガンティーニの絵です。
 「嬰児殺し」または「悪しき母」。
 アルプスの白い山を背景に、雪原に生えた裸の木に吊られて身を捩る女の絵。
 女の胸の辺りには、赤ん坊が描かれていて、彼女が授乳をしていると分かります。
 屋敷の主人であるアルフレードの背景にあるものをイメージさせるような絵。
 アルフレードは、誘い出したマクグランに、養父でもある祖父が子供の頃の自分に与えた贅沢な玩具の数々を見せ、自分は祖父にこの家の生贄として選ばれたのだ、と言います。
 あらすじとしては、次の日の朝、屋敷にアルフレードの祖父の時代に勘当された叔父、ジェームズが訪ねてきます。
 どうやら、アルフレードと不仲らしい彼は、庭に散歩に出た後殺されてしまうのですが、その殺人事件の謎が解かれるとともに、侯爵家に隠された恐るべき秘密が明らかになる、というサスペンス。
 何やら、同性愛で近親相姦のにおいもするようなしないような。
 『アジア変幻記』のところでも書いたのですが、この話にも、魔力でもって人を支配する動物として孔雀が登場します。
 ジェームズの死体の背中にのって、まるで踏みつけるような孔雀のコマは、おそろしくも美しい。
 ひたすらに曲線を連ねて描かれた空中庭園も美しいなあ。
 小さい絵で分かりにくいですが、下に貼ったアマゾンの表紙画像に描かれているのが、アルフレードです。

パエトーン (ハヤカワ文庫 JA (567))パエトーン (ハヤカワ文庫 JA (567))
(1996/10)
坂田 靖子

商品詳細を見る


 最後に『闇夜の本』ですが、これは、坂田マンガのいろいろなジャンルの話をいろいろ詰めこんだ傑作集。
 私は、2の「骨董刺繍」と3の「クリスマス配達員」が特に好き。

闇夜の本 (3) (ハヤカワ文庫 JA (537))闇夜の本 (3) (ハヤカワ文庫 JA (537))
(1995/12)
坂田 靖子

商品詳細を見る


 心のおもむくままに書いていたら、何だか長くなってしまったので、いったん切ります。


 漫画ナツで、他の方の選んだマンガのリストを見るのも楽しいこの頃。
 楽しく、そして悔しい。
 しまったこれも選んでおけばよかった、しまったこんなおもしろいマンガを今まで読んでいなかった、の二択。
 今のところは前者が多いのですが、これから、リストアップされている未読の作品を読んでみるにしたがって後者が増えていくんだと思います。


スポンサーサイト

コメント


管理者にだけ表示を許可する
 

 

トラックバック

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。